●第 4 章 睡眠の話

 

前章までは栄養を中心に解説してきましたが「ウェルビーイング」の鍵となるのは食事と睡眠です。

 

この章では睡眠について論じていきます。

 

●第 4 章 第 1 節

・睡眠の重要性

 

人間のウェルビーイングの基本概念は、「ホメオスタシス機能」が最大限に働いている状態です。

改めて、ホメオスタシス機能とは何かというと、体の「自己統制能力」です。

 

傷ついた筋細胞を修復する、肝臓や筋肉にグリコーゲンを取り組む、体に必要なホルモンを作ったり、分泌する。

 

そういったことが自己統制能力の内容です。

 

自己統制能力というものを考える時に、老化という現象は無視することができない現象です。

自己統制能力というのは、一言で言えば、生理的にあるべき状態を維持するということです。

 

例えば、ジムで筋トレをしても何日かすれば、筋肉痛は取れてきます。

これは傷ついた筋細胞が修復されているからです。

 

このようにあるべき状態を維持するのが、自己統制能力です。

ところが、年をとると加齢とともに、様々な機能が落ちてきます。

 

この機能の低下は明らかに、自己統制能力が機能していないことを意味しています。

老化はどれだけ体に気をつけていても起こります。

 

そこにはどのようなメカニズムがあるのかということですが、私たちの細胞の中には「テロメア」と呼ばれるタンパク質酵素があります。

 

そして、このテロメアには寿命があります。

この寿命はテロメアの物理的な長さによって規定されており、テロメアが長ければ、長いほど細胞は正常に生まれ変わります。

 

そして、テロメアの寿命が尽きると、その細胞はもはや同じようには生まれ変わることができなくなり、若干違う形で生まれ変わります。

 

この若干違う形で生まれ変わる細胞が白髪、しみ、最大酸素摂取量の衰えなど様々な形で現れます。

 

簡単に言えば、このテロメアを長くすることができれば、アンチエイジングにつながるのですが、このテロメアを長くする方法が睡眠と瞑想です。

 

歴史的に見ても、禅僧は長生きの人が多いです。

これは粗食と、規則正しい生活と睡眠、瞑想(座禅)のおかげとされています。

 

他に睡眠中に起こる効果としては、筋グリコーゲン、肝グリコーゲンの再合成、ホルモンの合成や分泌、筋肉の修復、記憶の整理などがあります。

 

ちなみに、これら自己統制能力や記憶の整理というのは全て無意識のうちに行われていることに注目してください。

 

どんな優れたマラソンランナーでも「さて、そろそろ筋グリコーゲンでも作るか」と思い立ち筋グリコーゲンを再合成している人はいません。

トレーニングをして、食事をして、睡眠をとる、その中で勝手に行われています。

 

ところが、起きている時というのは人間は無意識だけではなく、意識も働かしています。

 

例えば、長距離ランナーが1キロをプラスマイナス2秒くらいのズレでペースをコントロールすることができるのは、体の感覚や動きに意識を向けているからです。

 

セールスパーソンが見込み客に効率よくプレゼンし、クロージングをかけることができるのも、意識を働かせて、見込み客の隠れたニーズや不信感、不安感をかぎつてそれをうまく満たしてあげることができるからです。

 

ですが、寝ている時というのはそういった意識的な行為が全て中断されます。

「昨日、俺は寝ている時の筋肉の動きを全て意識的にコントロールしていた」という人がいれば、それは寝ているんじゃありません。

 

寝ている時は、人間の行為の全ては無意識のうちに行われます。

ごく稀に夢遊病者もいますが、夢遊病者も無意識のうちに行動しています。

 

ポイントは自己統制能力の全ては無意識のうちに行われるということです。

ですので、無意識の行為が最も活発になる睡眠中は、自己統制能力も活発に働きます。

 

今回はここまでです。

次回も睡眠について論じてまいります。

 

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